医療安全全国共同行動2011の提案
あい次ぐ医療事故によって、いま医療に対する信頼が大きく揺らいでいます。 医療従事者は医療の安全確保に日々努力を重ねています。しかし、医療技術の急速な進歩に対して医療システムや制度改革が遅れた結果、欧米の調査によると、入院患者の3%〜16%に医療行為に伴う何らかの傷害(有害事象)が生じており、米国医学研究所は、そのうち半数強は回避可能なものでこれらの傷害が関与して死亡したと推定される死亡の数は年間44,000人から98,000人に上ると報告し、医療システムの質と安全を早急に改善する必要があることを指摘しました。日本の調査では、入院患者の6.8%で有害事象が生じていることが報告されており、これはカナダでの発生頻度とほぼ同じであることを示します。
医療過程で生じる有害事象には本来回避可能なものと不可避のものがありますが、有害事象が多発する現実を直視すれば、これら多発する有害事象を可能な限り低減させ、かつ有害事象から患者さんの生命を守るために全力を尽くすことは医療に関わるすべての人々の責務であります。いまこそ、医療を担う病院と医療を支えるさまざまな団体・学会・行政・地域社会は、立場や職種の壁を超え、一致協力して有害事象の低減と医療事故の防止に総力をあげて取り組むべきとの考えのもと、2008年5月に医療安全全国共同行動("いのちをまもるパートナーズ"キャンペーン)の実施を呼びかけました。これを受けて、日本の医療を担う多くの団体と全国の医療機関が自主的に参加し、互いに協力しながら医療の質・安全の確保と向上をめざす組織的な活動を推進してまいりました。
これまで2年間の活動を通じて安全対策の普及が進み、指標にもその成果が現れつつあります。その成果を確たるものとし、医療安全の普及をさらに進めるために、共同行動の一層の拡大と発展が重要と考えますことから、全国の医療機関と医療に関わるすべての人々にこのプロジェクトにご参加いただき、ともに力を合わせて信頼される医療の確立を実現することを呼びかけます。また、患者さんと医療者がともに安心して治療に専念できる医療環境づくりに、国民の皆様のご協力とご支援をお願いいたします。
2011年1月1日
医療安全全国共同行動
議長 高久 史麿
【”医療安全全国共同行動2011” の行動目標】
1.危険薬の誤投与防止
2.周術期肺塞栓症の予防
3.危険手技の安全な実施
4.医療関連感染症の防止
5.医療機器の安全な操作と管理
6.急変時の迅速対応
7.事例要因分析から改善へ
8.患者・市民の医療参加
S. 安全な手術-WHO指針の実践
(参考)
- “Medical Harm”(医療に伴う傷害/有害事象)
防止可能なものか、過失によるものか、入院後に生じたものか否かにかかわらず、医療の結果として、あるいは医療が関与して(必要な医療が行われなかった場合を含む)生じる、意図しない身体的損傷で、そのために観察、治療あるいは入院が必要となるもの、あるいは死に至るもの。(by Institute of Healthcare Improvement)
- 有害事象発生率
(出典:WHO/World Alliance for Patient Safety “Forward Programme 2005”)
調査を実施した国対象病院と対象年度有害事象
発生率(%)米国 (ニューヨーク州) 急性期病院(1984年) 3.8%米国 (ユタ、コロラド州) 急性期病院(1992年) 3.2%オーストラリア 急性期病院(1992年) 16.6%英国 急性期病院 (1999年−00年) 11.7%デンマーク 急性期病院(1998年) 9.0%ニュージーランド 急性期医療(1998年) 12.9%カナダ 急性期・地域病院 (2001年) 7.5%
- 日本の有害事象発生率に関する調査
厚生労働科学研究費補助金医療技術評価総合研究事業「医療事故の全国的発生頻度に関する研究(主任研究者 堺秀人)」平成15年度〜17年度総合研究報告書、2006 年。